
佐高氏「西部さん、今回は山本五十六という事になったが、予告編を、、」
(残念ながら「映画 山本五十六の予告編」動画 削除)

佐高氏「実は、山本五十六の評伝を書こうと思った事があって、西郷隆盛書いて、福沢諭吉書いて、次に五十六かなと。ある新聞でアレしたが編集長が替わって、原敬になったが。西部さんは五十六については?」
西部氏「1ページもないが、山本五十六は長岡の人で、僕も1/4長岡人。

その前の幕末の河井継ノ助も長岡で、河井、山本と来ると1/4位は同郷のよしみで(笑)ある好意を感じる。
僕は成島監督とあるバーで1年に1ぺん位接触がある。最近凄く活躍している若い監督。

ただこの成島映画をまとめていうと・・・丁度去年真珠湾攻撃の70周年か、それを気にして作ったんだろうが、
例えば、映画評論家の寺脇研さん(元文部官僚)・脚本家の荒井晴彦さんたちが僕に、『山本五十六はもしも生きていたらA級戦犯でしょう』と。
それはそうだと思うが、ちょっとまとめて言うと、
つまり東京裁判って言うのは、つまりアメリカのね、日本に対する一種の復讐裁判劇というか、法律的裁判を装った見せしめ劇だと思うが、その見せしめ劇に山本五十六が生きていたら主犯だとなっていた。なんせ真珠湾攻撃を始めた人だから。

とすると、、あんな裁判は見せしめ裁判にすぎんという事を、山本五十六という人物を描く事によって、五十六はなかなかの面白い人物だったと描く事によって、
いわゆる渡部昇一さんなんかが言ってた、
東京裁判史観というか、あの戦争は悪い戦争であの戦争を推し進めた人達はね、悪い政治家で、悪い軍人さんなんだというね、で、66年戦後続いたそういうものをね、ある程度払拭するっていう意味で、
山本五十六はなかなか面白い人物であったと。この人が戦争を始めたんだと。それ故にといっちゃ、、あの戦争に対するものの見方をね、大きく軌道修正しても良いんじゃないかって、、
もちろんこれ政治映画でもイデオロギー映画でもないので、そういう解釈は強引だが、でも、でもそういう事で作ったのかな~となるんですかね? 良く分からないんだ。」
佐高氏「私はそう深くは考えないで見たが、つまり指導者の責任みたいな事は、きちっと描いていると思った。
つまり、私は書こうと思ったくらいだから、ある程度の親近感はあるわけで、
つまり、最初は開戦反対で、陸軍から暗殺されかねない形で頑張って、始まったらやっぱりその場の責任としてやると。(あ~そういう事か) だから責任っていうのを引き受けてると。指導者、、」

西部氏「仰る通りかも知れない。でもですな、あの戦争は最初から、自由民主主義 対 言わば全体主義というイデオロギー的構図の中で戦った世界戦争で、総力戦と言われているもの。
あれは当初からね、大戦争が始まったら、地域的には首都を落とすまでね、あるいは相手の軍隊を壊滅させるまで、もっと言うと、相手の国民・民族にね回復不可能なダメージを与えるまで終わるはずのない戦争だと。
これはね、日本がそういう風に深く考えていなかった。日清・日露はいくつかの戦役で勝利を収めれば講和で、賠償金払って領土を一部割譲して、戦争お仕舞いという事だったが、
総力戦なので相手の国家の背骨を折るまで止めないって戦争を分からなかった日本。あるいはその1人である山本五十六が、これ有名な話だけど、『半年ぐらいなら存分に暴れてみせましょう』 と言ったと。

そんな半年でやったって、これ古い戦争だから。半年で真珠湾襲って、例えばミッドウェーで勝ったとして、アメリカがダメージ大きいから負けたことにするというような、生易しい戦争じゃなかったのに、山本五十六は始めちゃった。
これは悪い戦争を始めた責任じゃなくて、軍人として総力戦において見通しのないまま戦争を始めた軍事的責任のようなものは残るんだろうね。」

佐高氏「私は石原莞爾という人を書いた者から見ると、石原莞爾は逆に戦争の火をけておきながら、戦後は責任取らないで、『俺を戦争犯罪人に何故しないんだ』と言ったと。
ここは山本五十六と逆転していると思う。山本五十六は反対していながら突っ込まざるを得なくなった。で、講和というのは軍人の責任かっていうのがある。

つまり日露の場合は、ルーズベルトを引っ張り出しているが、今回はアメリカを叩いちゃってるから講和で頼るところがない。」
西部氏「そうだよね。最終段階ではソ連に頼もうという(笑)」
佐高氏「なんか責任とかいうものも、ある種限定的に考えなければならないとすると、石原莞爾よりは数段(笑) アレじゃないかと。」
西部氏「それはそうだ。僕はそれはわかる。軍人だから言わば政治が始めることに、軍人はその場で辞めないとしたら、命令だからやるしかない。ただそこの問題は残る。軍人は辞めることができる。
もしも、しかし半年で終わるはずのない戦争、アメリカのワシントンを奪わない限り終わらない戦争を、、 辞めることも出来たんだよね、本当はね。(でもー、あの状況だと) 出来ないよね(笑) (あのままだと暗殺されますよね?) そう。陸軍の過激派にね。」
佐高氏「それとある種、こういう山本五十六は偉かったという映画の場合の常だが、マイナス面が出てこない。」
西部氏「あなたになり代わって言うと、要するに山本五十六は2号さんがいたわけよね。モテた男。もっと言えば女遊びが激しい、、その辺りのことはきれいさっぱり削られてるのね。
でも事情があるらしいよ。この映画は山本五十六の遺族会のサポートを受けて作られているので(エピソードをもらうとか)、遺族会の気持ちを傷つけるような場面は、、映画といえども一つの商売だからね。」
佐高氏「評伝・人物スケッチする場合、必ずそれがネックになる。遺族は自分の身内のものだと独占しがちだけど、ある種、それを超える側面があるわけで。」

西部氏「そう、それで、これは言っていいのかな~?? 僕はあの硫黄島(いおうとう)にね、一度行ったことがある。昔そこに暮らしていた人・遺族は行けるが、今は簡単にいけないくて、自衛隊員が二百何十人いるだけ。
遺族団の許可を得て行った時に、埼玉の入間の自衛隊飛行基地から輸送機みたいなので出発して、

前の晩に遺族団の集まりで、その時僕、硫黄島の西大佐ね、オリンピックのバロン・ニシ。 あの人の末息子さんが遺族団の団長で、『遺族団以外の人が参加しているけども、この戦争について、この遺族団はある悲しみの気持ちをもって、弔ったりなんなりするんであって、それ以上のあれこれの言動は差し控えて頂きたい』と言われたとき、
僕はその気持ちは重々分かりながらも、でも同時に硫黄島のね、激戦は別に遺族団の私物じゃないし、そこで何を感じて何を考えるかというのは公の問題でそこまでチェックされる謂れはないのになと、ある不満を心に持ったのは確か。
まぁ別にそれに逆らう気もないんだけど、得てして戦争の遺族団にそういう傾きがありそう。これは私の先祖とか、、でも、あれは国家の問題ですからね。」
佐高氏「そうなんですよね。だから山本五十六の戦略・戦術を論ずる場合に、確かこの中(映画)で激しくやっている時に、将棋を指してるのが出てくるが、
その場面だけだと、逆に山本五十六という人が矮小化されていきますよね。」
西部氏「しかも、僕は将棋ってのはある話だとは思うが、とにかく大将たる者、そこで気が動転したり焦ったりしたらダメなので、泰然自若と将棋を指しているという貫禄によって、全軍にある落ち着きを与えるという芝居だろうが、
でもそこは難しくて、どういう風に受け取られるかね。」

佐高氏「それとやっぱり女性に博愛の人がすべて良いという話じゃないが、やっぱり男に好かれる人は女にも好かれるという側面はありますよね。」
西部氏「アンタ、優しいのにね(笑) 」
佐高氏「いやいやリーダーの条件って言うか、、そこを描かないっていうのは山本五十六を逆に小っちゃくしていると思う。」
西部氏「そう。ただ僕はもうちょっと、、確かに時代が時代だし、ましてや指導者だから、2号さんや10号さんが居ようがいいが、案外、その異性の存在は、男にとって女性の存在は危ない面もあって、
これは勝手な想像だが、これから何百万死ぬだろう大戦争を仕掛ける時に、本人だって大不安なわけで、その不安は不安でじっと自分で引き受けて、あれこれ考えて決断するのは物凄い厄介なことで、
その時に簡単に女の所に簡単に行っちゃうと、自分の不安を中途半端にして、大物は結構女性の前で見栄を張る。そうすると奥さんじゃない女性は『すばらしいわ』となって、、案外男なんて山本五十六と言えども誰でも、後でヒーローとして扱われているけど、現場感覚だとそんなヒーローなんてほとんど居ない。と考えてると、女の問題は、どう描くかは別として重要なファクターであるんだよね。」
佐高氏「つまり、悩まないって問題は大きいわけで、悩まない人として描かれちゃってる。賢婦人がいて、、」
西部氏「結構こういう弱っている男たちがね、実は、表は大言壮語しているが、心の中で女に救いを求めているという、そういう男たちを本当に山ほど見た。
僕だって、しがみ付きたくなかったわけじゃないけど、それをやったらオシマイだという感覚が根強くあった。まぁ美学と言うか、北海道から来た田舎者の限界かもしれないが。
それを1万倍膨らますと、五十六さんだって危ないとこあったんじゃないかなって気になる。違うかも知れないんだけどね。」
佐高氏「だから揺れを描いてほしかったと言うかね。だから揺れが将棋しかないっていう、それがちょっと五十六ってそんな人だったのかという、、」

西部氏「そう、ヒットラーだって、エヴァ・ブラウンとねぇ、もちろんあの人はアドルフ君はどっかちょっと精神がノーマルじゃないとこあるからだけど、
でも、ヒットラーという人物を描くときに、いっつもエヴァ・ブラウンの事も合わせ鏡のように描かないと分からないってことがある。」
佐高氏「なんか、物凄く謹直な人として描かれすぎる。」
西部氏「本当に良きパパみたいなね」
佐高氏「遺族の気持ちも分からないではないが、どうぞお好きに描いてくださいというのが遺族の態度ではないかなと。」

西部氏「特に硫黄島の栗林中将は本当にひたすら良きパパなので、それとの対比で山本がどういう人だったかが気になる。恐らくかなり栗林中将と隔たった生き方・人柄だったんだろうね。」
佐高氏「原田美枝子演ずる奥さんが賢婦人で、そうかも知れないけどというのがある。」

西部氏「例えば真珠湾攻撃の南雲中将に任せとか、肝心要の半年後のミッドウェーも南雲に任せて、成功とは言えない状態に、、
もしもその時、どうして自分が信頼もしていないどっか疑っている南雲に任せたかってな事まで気になったりね。
そういう山本五十六の人柄のブレをね、描くためにはプライベートライフのブレを同時に描いてくれた方が分かりやすかった。」

佐高氏「あのー、ヒトラーのマインカンプに、日本人を劣等民族視している指摘があると。でそういうのを若い将校たちに嗜めたりする場面もあったので、その辺はかなり丁寧に描いている反面、ちょっと神様にしちゃったなと。」
西部氏「例えば真珠湾でも『失敗だった』というセリフがあったが、これはアメリカの空母が実際に居なかったんだよね。だから戦艦をやっつけただけなんだけど、
それもアメリカ軍軍事基地の徹底的破壊を南雲がしないで帰っちゃった。(ある種の派閥争いの中で、、) そうなんだよね。

これも山本五十六のせいじゃなくて、海軍全体の東条英機派・統制派の息のかかった人たちを送り込まれているから、五十六さんにはどうしようもなかったのかも知れないけど。」
佐高氏「まっ、全体的にはかなり丁寧な映画だなと思うが、、」
西部氏「そう思いますよ、特にこの時期にこういう形で、
これまでは戦争反対でさぁ、帝国軍人は悪い人たちだと子供っぽい色づけ、それから遠く離れたまぁ、ちゃんとした映画だと思う。 」

西部氏「この映画、奇しくもタイムリーなことになってると思うのは、いわゆるABCD包囲網が、日本に対して経済封鎖を仕掛けてきて、最終段階で油を売らないくて日本は干上がってくる。

それで突破口を求めて、なんとか大東亜共栄圏と言われていたが、それ以上にもう遮二無二でもこの経済封鎖の網を破らなければ国家として自存できないというギリギリまで来てたのは、ちょっと描かれているが、

もう一つは援蒋ルートを、、だから日本が真珠湾を襲う前から、既に戦争は始まってる。

奇しくもと言ったのは、現在イラン・ベルシャ湾でホルムズ海峡封鎖あれ、アメリカ・イギリスなどが完全に経済封鎖を仕掛けて、イスラエルその他も加担しながら最終的にはイランの核開発施設を軍事的攻撃する寸前まで行っている。
そこでイランがその突破口を求めてホルムズ海峡封鎖に出るという相当キナ臭い、、
恐らく、あの時の日本もそれに近い感じの、少なくとも為政者にとってはジワジワと首を絞められてるっていうね、そこでバーンと爆発したのが日本として軍事的・政治的に巧みだったか下手だったかという議論は可能かと思うが、
大きなマクロ的な歴史の振り返りから言えば、
起こるべくして起こった戦争だと。
ペルシャ湾のホルムズ海峡はどうなろうが、あそこまで状況が煮詰まってきたら、何が起こっても不思議じゃない、その寸前まで来ている。
そんなことを考えさせられるという意味で、僕は観客がそこを分かってほしいなと思う。
よくさ、白人帝国主義なんて一言で言うけど、具体的に、、
例えば日本人がアジアを侵略したと、この場合の侵略って言うのは、あってないような国際法を、、自分の方から、軍事的先制攻撃を仕掛けるという意味での日本の侵略は数々あるが、
でも、その前にインド・ビルマにイギリスはいる。フランスはインドシナにいる。オランダはインドネシアにいる。アメリカはフィリピンにいるって、、オマエたちどうしてそこに居るんだよって言われたらね、
人種の問題じゃないけど、白人たちが権力を握っているその当時の帝国主義諸国が、偉そうにね、日本のことをああだこうだ騒ぐなんてのは、僕に言わせりゃ子供の時から思ったけど、1ミリも出来るわけないでしょと、。
そういうことを考えさせる映画、、考えてくれと、、」
佐高氏「つまり、繰り返してるなと思うのは、アメリカとイギリスが大量破壊兵器云々で爆撃したが、大量破壊兵器はイラクになかった。あれは侵略ですよね。(間違いなく侵略だよ ) そうすると、それがまた違った形になると。
今、新聞なんか見てても、やっぱりイランは悪者で・・・みたいな論調ですよね。だから私はこの映画を見て一番思うのは、そういう状況の中で山本五十六に無限の責任はない。有限の責任の中でそれなりのことをやったと。
だから無限責任でやると凄い辛い評価になるが、あの状況の中で敢えて無限責任を要求するでしょ。山本五十六だったら全部何でも出来たような、、でも出来るわけがないわけで、、」

西部氏「本当にそういう事を色々と考えさせられる。映画では、具体的に言われてないけど、僕はあの当時の諜報合戦・スパイ合戦が、真珠湾を襲ってみたら実は空母が居なかったり、、
そうすると、少なくとも仮説でいいけどさ、
やっぱりアメリカは戦争に引き込んだんじゃないかと。空母が一隻も居ないようなパールハーバーというのは、アメリカは相当程度のことを分かった上で、日本に襲わせたかもね?!と。
何もそれを書かなくてもそういう風に感じて、それでアメリカの『リメンバー・パールハーバー』なんて戯言にね、よくもまぁ66年前から言い始めたもんだと。
ちょっと話し外れるが、本当に杜撰だなと思うのは、例えば1時間前までに宣戦布告する云々なんて言うが、真面目に考えてくれと。
もちろんワシントンの日本大使館が翻訳が遅れたとか馬鹿な事はあったが、それ以上に、
そもそも戦争というのは、先制攻撃から始まる。どうぞ皆さん存分に備えた上で始めましょうねって、別に将棋さしてるんじゃないから、やっぱり勝つために襲うわけなので、ギリギリまで相手に教えない。
厳密に言うと、あの宣戦布告事自体ね、単なる飾りの、、
そのそこだけ膨らましちゃってね、日本は不法な戦争を始めたなんてね、そういうちゃちな話に戦後の日本は全部巻き込まれるんだから。」
佐高氏「ちょっと話変えるが(笑)、真珠湾のかなり難しい攻撃は、北海道で、、」
西部氏「そうそう、千島でのあそこからずっと南下してった。」

佐高氏「エトロフ発緊急電で、佐々木譲さんが書いてる。あの段階で、やっぱ察知されてますよね。」
西部氏「と思うよ僕は。」
佐高氏「察知されてないということはないでしょうね。」

西部氏「よく言われているが、日本が襲ったときにさ、チャーチルが手を叩いて喜んだと。要するにアメリカを巻き込みたいわけね、イギリスは。
ルーズベルトもやりたかったんだけど、開戦の口実がなかなか見つからないと。そこで『リメンバー・パールハーバー』と。
リメンバーという言葉には『記憶せよ』と『思い出す』と言う意味がある。
僕は日本人は『思い出せ 真珠湾を。あれはやむ終えなかった』とかさぁ(笑)『なかなか山本五十六はがんばったんだ』とかさぁ、そういう意味でのリメンバーをしてもらいたと思う(笑)」
佐高氏「石川好はアメリカ人が『ノーモア・ヒロシマ』で、日本人が『リメンバー・パールハーバー』と言うべきだと。
まぁしかしあまりに戦争は、具体的にどういう形で起こるかを知らなすぎるから、丁度良い映画、、」
西部氏「ホントに、ホントにそう思いますよ。それから今の日本人には分からないことかも知らないが、第一次世界大戦が終わって、パリ講和条約で集まったときに、日本は講和会議で提案した。

要するに
人種差別をやめようと、ガンガン頑張った。ところがそれを適当に誤魔化したのがウッドロー・ウィルソンだ。アイツらですよ。巧みに日本の提案をチェアマンとしてすっぽかして、人種差別廃止国際条約みたいなのをすっぽかした。
案の定、それから5,6年経って、カリフォルニアで日本人移民排斥って、、そんなことにヒステリー起こしているんじゃないが、
帝国主義が絶頂に達したと同時に、やっぱり人種差別もね絶頂に達してたんだよね。
要するに民族皆殺しっていうジェノサイドっていうのは、別にユダヤ人だけの問題じゃなくて、あの時に帝国主義戦争が勃発した時には、他国民・他民族は絶滅しても構わないという、だからアメリカだってそういう思想のつながりで原爆も落とせるし、東京空襲その他で何十万もねずみのように焼き殺すって事、、怒ってるんじゃない、そういうもんだったって事を、、」
佐高氏「ウィルソンがアイツになってました(笑)
ただ、この映画で強調したかった事で、私もそのとおりと思うのは、当時は新聞ですね、つまりメディアの責任。新聞が煽ってんですよね、完全に。軍部の方がむしろ、特に五十六なんかは戦争したくなかった方だから、躊躇っていると、『そんな事で!』って煽るわけでしょ、新聞が。」
西部氏「いやこれ恐らく映画のレベルでここまでハッキリと主張したのはこの成島映画が最初じゃないかな。ちょこまかはあっただろうけどもあの戦争を強引に押してったのはメディアであるというね、小さい声で言うけど、あの
映画に出てくるあのナントカ新聞ってのは朝日新聞の事だよね(笑)
佐高氏「まぁ、
朝日、毎日が競ってね」
西部氏「毎日もやってたんだけどね。本当に敗戦の日まで頑張ってるからね、メディアはね。でも世間に知らされてないけども、実は意見を変えたんじゃなくて、新聞社内での権力の転覆が起こるんだよ。それまでジッと控えてたリベラル派が、敗戦と同時に会社の編集権とかを握って、そういう形で戦後が始まるんですがね。」
佐高氏「それがある種の
政権交代みたいにして、新聞の責任はなかったみたいになっちゃったんです。」
西部氏「この映画はそれが執拗に描かれてますよね。
佐高氏「香川照之、編集局長みたいな人がね」
西部氏「三国同盟を結んで、これぞわが民族の正しい道だと言って、山本五十六他にプレッシャーをかけ続けると」

佐高氏「だから昭和20年8月15日に、新聞の戦争責任で辞めた人って、朝日新聞を辞めたむのたけじしかいなかったんですって。一人でもいたのが救いなのか、一人しか居なかったっていうことなのか(笑)」
西部氏「これはちょっとズッコケた話だけど、好戦主義。(戦争の女神の話 略)メディアも戦争が大好きなんだけど、この映画でもちょっと描かれていたけど、やっぱり女たちも、男たちが戦うのを見るのが好きなんですよね。
結構、あの時代の女たちは戦後、夫と子供を戦争に取られてかわいそうな女たちみたいな話か出てこないが、同時にいかに女たちが戦争を煽るのが好きかというのを僕はもうちょっと描いてほしかった。」
佐高氏「なるほど~。まぁ煽られて行くのが男ですからね。そういえば戦後
パンパンという変な言葉ありましたよね、娼婦。米軍相手の。
で、あの人たちの事を書いた中で、彼女たちから見ると、日本の男は打ちひしがれてて魅力なかったと。(そうね~) 敗戦国の男たち。で、やっぱり米兵の方が魅力があったと、、」
西部氏「女はやっぱりね、危機的な状況では、金と権力の周りに女たちは群がるんですよね。だからパンパンもそうだと思うけど、
ところでね、たまたまテレビ見てたら、フィリピンの米軍基地があった時の話で、パンパンって言葉が出てきた。
米軍基地があった近所の村の名前がパンパンだった。そこに米軍相手の娼婦が、、それ(言葉)が日本に持ち込まれた。
それを見ただけでも米軍が、フィリピン経由で日本にやってきたっていう事は、タガログ語のパンパンという言葉を見ても明らかなんだよね。」
佐高氏「でも、新聞の責任っていうのはもう少ししつこく丁寧に言わないとアレだ。」
西部氏「それと世論というものの怪しげさね。そういう
メディア世論の作り出すひとつのムード・雰囲気・気分の中に、多くの人がワーーッとなだれ込むという、やっぱりデモクラシーの根本にはそういう動きがある。
ですから大戦争こそはまさにギリシャの昔から民主主義につきものみたいなところがある。アメリカだって民主党時代に大戦争やることが多い。
だから
民主主義はね、平和主義なんて、、平和と民主なんて言葉はねそう簡単に吐くなよと。
だって民主主義というのは多くの民衆の気分を集めないと民主主義は成り立たない。それが世論だが、それは雰囲気であり気分であると。.そうすると戦争と結びつきやすいものだ。」
佐高氏「だから民衆が愚かであるか賢明であるか。賢明だという前提に立っちゃうからね。(西部氏の弟分の佐伯啓思が竹中平蔵を産経新聞でこてんぱんにやったのと話など 略)」


佐高氏「山本五十六って、米内光政とか井上成美とか海軍三羽烏とか言われて、、この映画見る限り、それなりにもちろん山本五十六の支持者も居るが、強力な反対者も海軍の中に居て、そういう人たちに対する働きかけっていうのはあまりないですね。
俺は俺、あいつはあいつの道を行けみたいな、、」

西部氏「昔、戦記物をまとめて読んだ時に、海軍の中にドイツ帰りで、鹿児島出身の神重徳が中堅幹部でいて、強烈に三国同盟で対米決戦、、
陸軍は親米英で、海軍はドイツ派だという単純な対比があるけど、どうも海軍だって中堅幹部たちはドイツ帰りでしょ。1930年代ナチズム・ファシズムが熱狂を持って一般民衆から支持されているという光景を見て帰って、、なんか滅びつつある帝国のねぼやけた戦略・戦術を真似してどうするんだー!っていうね、強烈にドイツ派が海軍の中に居たんでしょうね。
したがって上の方は若干、米内光政から始まって親米なんだけど、やっぱりその中堅と上層部の間に乖離があったんでしょうね。」

佐高氏「だから城山三郎さんは、17歳で海軍の海兵団に入って、ハンモックの上で寝かされて、夜中にそれを訓練だー!と切られて、、だから海軍が合理的だなんて戯言だって書いてある。」
西部氏「(この映画は)歴史の大きなひとコマをもう一度66年ぶりに新しい角度で描こうとした、、」
佐高氏「海軍の山本五十六が居る所にむ、陸軍の青年将校が押しかけて、鉄砲を向けて。そういう対立みたいなものもあったという事が丁寧に描かれているという。」

西部氏「やっぱりね、始めた以上は、本土決戦まで行っちゃったらどうなんだと、徳富蘇峰は言ってたし、それから何十年か経ったら、ベトナムはまさに自分たちの本土で十年戦争をやってアメリカを追い返したし、アラブも色々とがんばってるしね。
日本は見事な戦争をやったんだけども、結構なんか負け方は不甲斐ねーなって(笑) 僕の子供の時からの(笑) もっとがんばりゃ良かったのにって、、」
佐高氏「なんか、急に咳き出てきました、はははははは。」
西部氏「でも彼は戦争始まって2年半で、現地視察に行って墜落事故(ほぼ自殺みたいなもんで) でも不時着した後も生きてて、最後に動けなくなってピストル自殺したと。
でも、そういう時代だから我々のような戦後に生まれた人間があんまり大言壮語できないからね。
なかなか立派な長岡人でしたと。」
佐高氏「なるほど。私がもし書いてればどういう結果になったか分からないが、軍人だからということで否定されるような人ではなかったということですよね。」
西部氏「そうそう」
佐高氏「その点は見事に浮き彫りにされているような気もしますですね。」

以上
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